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傑物の悲哀 ジェームス・トニー

 WBC世界ヘビー級挑戦者決定戦――。
 サミュエル・ピーター(ナイジェリア/26歳)VSジェームス・トニー(アメリカ/38歳)の第二戦は、3-0の大差判定でピーターが凱歌を揚げました。

 トニーは昨年(2006年)の9月、今回と同じ対戦者ピーターに1-2の僅差判定で惜しくも星を落として以来、二連敗を喫した形です。

 前回(第一戦)の判定が論議を呼ぶような接戦であったことを考えると、今回のピーターの完全勝利は意外ではありましたね。
 チカラ任せの荒削りなスタイルで知られる強打者ピーターが、ミドル級から上がってきた歴戦の技巧派トニーを、よもやKOではなくポイントアウトしようとは……。試合展開の皮肉さに、見ていて呆然となりました。

 これまでは、フック系のパンチをただひたすら強振するだけだったワンパターンなピーターが、出方を変えてボクシングに徹して来たことにはビックリ。そんなに器用なことが出来る選手だとは知りませんでした。

 と、地味ながら何かと見どころの多い再戦ではありました。

 が、終わってみればこの試合、おおよその形勢は第1ラウンドでほとんど決まってしまった観があります。トニーがいきなりいいパンチを貰って、早々にグラついてしまったんですよね。
 そのダメージが尾を引いて、ピーターのヒット重視の軽くて速いパンチをますます避けられなくなるという悪循環の中に、じわじわと取り込まれてしまった。トニーがやりたかったことを、逆にやられてしまった恰好ですね。

「今度ばかりは、希代の業師トニーもKOされてしまうのかも知れない……!」と、最初は寂しい気持ちになりました。

 戦い方(テクニック面)の改善により優位を獲得したピーターですが、それとても当然、トニーとの間に圧倒的な体格差があってのことでしょう。

 元々は70キロそこそこのミドル級の選手だったトニーと、ヘビー級の中でも最初から100キロ超の大男だったピーターとが同じリングの上で張り合おうと言うのですから、土台トニーに分のいい戦いではない。

 しかし、それを承知していてなお、第2ラウンドに訪れた光景には思わず目を疑いましたね。
 ピーターが放った軽めのジャブの三連打――。その最後の一発を避け損ねたトニーが、いきなり大きくひっくり返ってカウントを聞いたのには仰天しました。

 この日が79戦目の試合となるジェームス・トニー、何と約13年ぶりのノックダウン。

「これが体格の違いというものなのか……」と、心配と言うよりは諦め半分、もはや暗然としながら試合を見ていたのですが、それでも時折、目の覚めるようなクリーンヒットで会場を沸かせたりするところなどは、さすがはトニーと言うほかない。

 結果的に判定で敗れはしたものの、浅からぬダメージを引きずりながらも最後の最後まで不敵な構えを崩さなかったジェームス・トニーは、やっぱりカッコよかった。

by atom552808-7 | 2007-02-23 09:58  

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