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決断者ホリフィールドの照準

 1990年代――。
 リディック・ボウ、マイク・タイソン、レノックス・ルイスら名だたる強豪を向こうに回し、ヘビー級のトップ戦線を誰よりも勇敢に戦い抜いた世界最強ボクサーの一人、イベンダー・ホリフィールド。あらゆるボクサーの中で、マイク・タイソンと並んで僕が最も好きな選手です。

 現在では44歳になっているそのホリフィールドが、WOWOWで放送中のボクシング番組『WOWOWエキサイトマッチ』に登場したのには驚きました。

 もちろん、ホリフィールドが40歳を過ぎても現役の選手であることは僕も聞き及んでいましたし、今回の対戦者――33歳のフレス・オケンドに3-0の判定勝ちを収めたこともインターネットの情報で事前に知ってはいました(そもそも、これは昨年に行われた試合ですからね)。

 むしろ、その試合を今頃になってテレビで見られる事実に驚いたのでした。正直、凄く嬉しかった。
 と言うのは、この日のとりあえずの目玉カードはあくまで巨漢王者ニコライ・ワルーエフの防衛戦でしたからね。挑戦者がまた強打で鳴らすジャミール・マクラインということもあって、「もしかしたらワルーエフが負けるシーンが見られるかも……」などという強いての期待感にワクワクしながら、いざ番組を見たわけ。

 普段は2試合しか放送しないエキサイトマッチなのに、この日は何と3試合も放送するという。
「フーン、それじゃあワルーエフの試合がすぐ終わっちゃって、時間が余ったから3試合も流すんだね」と僕は即座に思いました(エキサイトマッチのファンなら誰しも考えることです)。

「それで……? ワルーエフ以外には誰が出るの? ホリフィールド? ああ、ホリフィールドね……。ええェ――ッ?!」
 僕はドギモを抜かれ、横たえていた上半身をガバと起こしました。「ホリフィールドッ?!」
 その瞬間、ワルーエフ戦への興味は吹き飛んでいました。

 久々に、テレビ画面越しに目にしたホリフィールド。
「外見的には、10年前からちっとも変わらないなあ」という印象(そもそも20代の頃から老け顔でしたからね)。
 そして肝心の試合内容は、思いのほか動きが良くて二度ビックリ。
 絵に描いたような中堅選手オケンドから、第一ラウンド開始早々に右パンチ一発でダウンを奪ったのには三度ビックリ。そして、放送時間の都合で8ラウンドと9ラウンドが端折られていたのには四度ビックリでしたね(涙)。

 ホリフィールドが初めて世界ヘビー級王座に就いたのは今から17年前の’90年10月。28歳の時でした。その初防衛戦では、当時43歳で老雄と呼ばれたジョージ・フォアマンを判定でどうにか退け、「年寄り相手に判定勝ちとは情けない」と、まだ20代だったホリフィールドに批判が集中したものです(私見になりますが、あれは当時のホリフィールドだったからこそ、あの程度で済んだのだという解釈も成り立つと思いますね)。

 そのホリフィールドが、当時のフォアマンより一つ年上の44歳となった今もなおリングに上がり続けている、というのは実に感慨深いものがあります。光陰矢の如し。
 ただ、ホリフィールドはヘビー級選手としては格別にハードパンチの持ち主というわけではないので、その辺でやはり豪打のフォアマンよりは苦労しているところがあります。再起路線としては、ラリー・ホームズの活躍ぶりに近い。

 しかし現在のヘビー級王者の顔ぶれを見渡す限り、ホリフィールドの付け入る隙が充分あるのもまた事実。ここは一つ対戦相手を慎重に選んで、ぜひともジョージ・フォアマンに次ぐ高齢チャンプ誕生の奇跡を起こして欲しいところです!

by atom552808-7 | 2007-01-25 15:48  

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